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 個別療育の進め方

 
DTT? PRT?

  応用行動分析学(ABA)に基づいた療育の代表的なものに離散試行型指導法(DTT:Discrete Trial Teaching)と基軸行動訓練(PRT:Pivotal Response Treatments)があります。

  自閉症や発達障害のある方への教育法としてはDTTが中心でしたが,般化の問題などからPRTが比較的新しく提唱され,研究が進んできました。具体的な指導方法はまた解説します。

  ABAに基づいた療育を行う専門家の中には,DTTを専門としている,PRTを専門としている,DTTはあまり良く無い,と言うように,2つを全く別のアプローチとして考えている方がいるようですが,その考え方は少し違います。DTTとPRTは指導方法や理念の区別はありますが,ABAの理論を理解していれば,全く別のものとして考える必要はありません。この点を簡単に解説していきます。

  療育もA-B-Cの三項随伴性の枠組みで進めていくことになりますが,DTTとPRTの違いを挙げるとすれば,先行条件(A)と行動の結果(C)の違い,重点を置く標的スキルの違いと考えることができます。

  先行条件(A)を考えると,DTTは課題以外の刺激を取り除き,課題に注意が向きやすいような指導場面を設定することが多く,PRTでは様々な玩具などを配置した自然な遊び場面を設定することが多いです。

  結果(C)を考えると,DTTはこどもが課題をできたら「よくできたね」と賞賛したり,こどもが喜ぶ物や活動を与えたりします。PRTでは,状況にあった自然な強化子を用いることになります。

  例えば,DTTではリンゴのおもちゃを提示して(A),こどもが「リンゴ」と発話できると(B),「よく言えたね」といって強化子のお菓子を与えたりします(C)。PRTでは,こどもの「りんご」と言う発話に対してお菓子を強化子として与えたりすることは自然ではないと考えます。ままごと遊び場面等を設定し,こどもにリンゴのおもちゃを見せて(A),こどもが「リンゴ」と発話できると(B),「リンゴ」,「リンゴどうぞ」と言ってリンゴの玩具を手渡して一緒に遊びます(C)。

  このようにPRTは,自然な場面で自然な強化子を用いて指導を行うことにより,獲得したスキルが日常生活で生じやすいように計画されています(般化)。

  標的スキルは,DTTでは特定の行動やスキルを対象とすることが多く,PRTでは多くの学習に関連する基軸となる領域(例えば,動機づけや多様な手かがり刺激(multiple cues)に対する反応性)を対象とすることが多いです。

  教育理念を横に置いておくと,DTTとPRTはこのような環境設定や強化子の設定,重点を置く標的スキルの違いと考えることができます。

  その他,PECS,TEACCH,フリーオペラント,VB,ポーテージプログラム,など様々な支援プログラムがあります。これらは多くの人たちが効果的な教育的支援を行えるようにプログラム化されているものであり,教育的な理念は異なるかもしれませんが,A-B-Cの三項随伴性で考えると大きな違いはありません。

  もちろん支援方法がプログラム化されるメリットはたくさんあります。例えば専門家でなくてもマニュアルに沿って指導することができる点,多くの人がある程度共通した指導を行うことができる点,各障害にあわせた指導のポイントが分かりやすい点,指導の効果を評価しやすい点など。

  机上での構造化した療育環境でも,注意や動機づけのような基軸となるスキルを標的とすることができます。他の刺激を取り除いた療育環境で基礎的な行動を指導し,獲得した行動を徐々に自然な場面で実行できるように計画することもできます。机上での学習でも色々な刺激(玩具など)を用いて,楽しく学習をすすめることもできます。

  特に専門家として特別な支援や療育を行う人は頭を柔らかくして,マニュアル化された指導方法にこだわらず,A-B-Cの三項随伴性の枠組みで柔軟に指導をすすめた方が良いです。

  A-B-Cの三項随伴性で捉えると,DTTとPRT,その他の支援プログラムを全く異なるものと考える必要はありません。こどもの注意力や興味,学習態勢に合わせて,こどもが一番学習できる療育環境を設定し,療育を進めていきましょう。


  注)なぜDTTの指導方法と一線を画す形でPRTの指導方法が提唱され,実践研究が進められてきたのか,また,PRTの指導の方向性を学ぶことは,療育を計画する際に非常に参考になります。療育で獲得した行動の般化や維持の問題に関して詳しく知りたい方は少し専門的な内容を含みますが,参考図書に挙げている『自閉症,発達障害者の社会参加をめざして:応用行動分析学からのアプローチ』を読んでみてください。


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