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 個別療育の進め方

 学習態勢を形成する1 机上の課題に取り組む
 

  療育を始める時、最初に行うことは「こどもの学習態勢作り」と「こどもとの関係づくり」になります。学習態勢とは、学習に取り組む行動であり、ある程度の時間椅子に座って取り組んだり、指示に注意を向けて反応したり、少し難しいことでも頑張って取り組むという行動です。そして、学習態勢を形成しながら療育者はこどもとの関係づくりを行います。言葉の理解や反応性、逸脱行動の出方などを確認しながら、一緒に遊んだり簡単な課題を行って良好な関係を築きます(こどもとの良好な関係づくり(ラポールの形成)に関しては、『コラム 「褒める」ということについて』参照)。

  例えば床に座っていたり、寝転んでいても療育を行うことは可能です。しかし、椅子に座って療育者に反応したり、机上の課題に取り組む態勢作りは大切だと考えています。なぜなら小学校や中学校の授業では長い時間椅子に座って授業を受けなければならず、その態勢ができていなければ、通常学級で授業を受けることが難しいからです。

  それと大切なことは、療育場面や勉強を嫌いにならない様にするということです。小さいこどもの場合は先が長く、小学校、中学校、高校、就労場面と勉強し学んでいかなければなりません。小さいときに勉強が嫌いになるとその後の学習が非常に困難になり、修正するのに時間がかかります。そのため、色々なことを学んでいかないといけないので焦る気持ちは分かりますが、勉強を嫌いにならないように、楽しく積極的に取り組む学習態勢を作っていくことが大切になります。

  学習態勢を形成していく基本的な流れの1つを紹介していきます。

  まずは、こどもを無理に椅子に座らせる必要はありません。強制的に座らせると嫌悪感を抱いてしまうので、自然とこどもが椅子に座るようにしていきます。簡単な方法は、こどもが楽しめる遊びや活動を椅子に座って机上で行うという方法です。つまり、椅子に座って机上で遊ぶということです。絵本を読んでも良いし、お菓子を食べても良いです。

  こどもが楽しめる活動を机上で行うことにより、椅子に座って机上の活動を行う行動が形成され、抵抗なく椅子に座ることができるようになります。そして、遊びと遊びなど活動の切替時や活動途中で簡単な課題を挿入し、課題ができたら活動を再開します。A-B-Cの三項随伴性の枠組みで考えると、『A:おもちゃ遊びが中断され、課題が提示される‐B:課題に取り組む‐C:遊びが再開される』という流れになり、遊びが再開されることが強化子となります。最初は簡単な課題で良いです。シール貼りや迷路など、こどもがすぐにできる課題を提示します。こどもができたら褒めてあげ、すぐに楽しい活動を再開します。そして、徐々に課題の時間を伸ばしていきます。成功経験を積ませ、課題に取り組む行動が繰り返し強化されることで、学習態勢が形成されます。

  こどもが椅子から立ち上がり歩き出し時は、「座って」といって戻すより、興味をひく物や活動を机上に用意し、自然と座るように促します。そしてできるだけ、「座って」と指示を出してこどもが指示を聞かないという経験はさせないほうが良いです。A-B-Cの三項随伴性で考えると、『A:「座って」という声かけ-B:座らず立ち歩く-C:「座って」いう声かけ』という随伴性をこどもに経験させてしまうと、こちらの指示の力が弱くなりこどもが指示を聞かなくなってしまいます。「座って」と指示を出すのは、こどもがある程度座れるようになり、態勢ができてきてからで良いです。

  このように椅子に座って机上の課題に取り組むという態勢作りを行い、こどもが楽しんで積極的に学習していくようにします。この態勢作りは今後の療育や学校適応にとって非常に重要になるので、焦らず、時間をかけて、楽しい雰囲気で取り組みましょう。

  楽しい雰囲気で態勢作りを行い,その過程を通してこどもとの良好な関係を気付いていきます。

  このように遊びや人に興味を示すこどもの場合は、椅子に座って机上の課題に取り組むという態勢作りは、それほど困難ではありません。しかし、自閉症状が強く、人や物に興味を示さないこどもの場合は、難しいことがあるので、また解説します。


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