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 行動的支援勉強ノート2 

 恐怖感や過敏な反応への対応


  発達障害,特に自閉症の傾向がある場合,特定の刺激に過敏に反応したり,特定の場所や物を避けたりすることがあります。赤ちゃんの泣き声やバイクの音,騒音に過敏に反応したり,髪を触られるのを嫌がり散髪が難しかったり,外出先のトイレに入ることができなかったり,犬に近づくことができないなど。

  『柔軟性,変化への耐性を養う』で変化に慣れることの大切さを解説しましたが,ここでは,特定の刺激への過敏な反応とその対応を学習理論の枠組みで考えていきます。

  障害の特性である感覚の過敏さが原因の場合は刺激に慣れていくのが一番だと考えられます。こどもが怖がるからといって嫌な刺激を避けていては慣れることができません。髪を触られたり身体への刺激に過敏に反応するようであれば,リラックスした遊びの中で,身体をさすったり,髪を触ったりするところから始め,感覚刺激に慣れていきます。音に対して過敏な反応を示すならば,こどもがストレスを感じすぎない程度に道路沿いの道を歩いたり,こどもたちが複数いる遊び場に連れて行ったり,遊び場面で苦手な音を小さな音で流したりして音に慣れていきます。

  ポイントは,こどもが嫌がる感覚刺激を全て避けるのではなく,無理の無い程度(嫌がりすぎない程度)の刺激から徐々に経験して慣れていく,ということです。慎重に注意深く無理のない刺激や活動から進めましょう。少し嫌がりそうなら時間を短くしたり,刺激を弱くしたり,補助具を用いたりしましょう。

  感覚の過敏さだけではなく,何か怖かった経験と特定の刺激が結びついて特定の刺激や場所を避ける場合があります。これは学習理論の『古典的条件づけ』が関係しています。古典的条件づけとは簡単の説明すると,刺激(A)と刺激(B)を対呈示すると,刺激(A)に見られていた反応が刺激(B)にも見られるようになるという条件づけです。

  有名なワトソンのアルバート坊やの恐怖条件づけでは,こどもが白いネズミを触ろうとした時にこどもの背後で大きな音をたてました。そうすると今まで白いねずみを怖がっていなかったこどもが白いネズミを怖がり避けるようになったというものです。つまり,白いネズミと大きい音を対呈示したことによって,大きい音への恐怖がねずみにも移り,白いネズミに対しても恐怖反応が見られるようになったということです。これは恐怖症が成立するメカニズム考えられ,恐怖症の治療法につながりました。

  アルバート坊やを例に挙げると,白いねずみと大きな音を対呈示せず,白いネズミを単独で提示することによって,徐々に白いネズミへの恐怖反応は消去されていきます。

  こどもが特定の場所や特定の物を怖がって避ける行動も,この恐怖条件づけが関係している可能性があります。そして怖くなった刺激や場所を避ければ避けるほど恐怖感は維持され強められます(これはオペラント条件づけで説明されますが,省略します)。その場合の対処方法は,できるだけリラックスした(安心した)状態で,徐々に恐怖を感じる場所や物に接近することです。

  具体的にいうと,例えば犬を極度に怖がる場合,犬と何か恐怖刺激が対呈示された可能性があります(急に吠えられたり,犬が近くにいるときに大きな音がしたなど)。原因は分からなくても良いので,対処方法としては安心できる状態で犬に徐々に慣れさせていきます。こどもが安心できる状態というのはそれぞれ異なりますが,一番は保護者が近くにいてくれる状態だと思います。そのため,例えば母親がこども抱きリラックスした状態で,犬の映像を見たり,犬のヌイグルミで遊んだりすることから始め,徐々に犬への恐怖感を消去していきます。

  そのような刺激に慣れたら,次は母親がこどもに寄り添った状態で小さな子犬と遊びます。こどもが怖がるようなら,父親が子犬と遊んでいるところを少し離れて母親に抱かれて一緒に見たりして無理のない形で徐々に子犬に接近します。そして少し子犬を触れたらしっかり褒めてあげ,触れる時間を増やしていきます。子犬に慣れたら,同じ方法でもう少し大きい犬に慣れていきます。そうして,犬と恐怖反応のつながりを断ち,犬と母親といった安心できる刺激を対呈示することで,犬への恐怖感をなくしていくということです。

  外出先のトイレに入るのを怖がるこどもであれば,犬への接近と同様に,まずは母親がこどもに寄り添って,父親がトイレで手を洗っている所を外から見たりします。そして,母親と一緒にトイレに一歩入ったり,トイレの壁にタッチしたり,手を洗ったりするところから始め,徐々にトイレと恐怖の感情のつながりを断ちます(消去)。この場合,無理にトイレに入れたり,怖がらせてはいけません。母親が寄り添い,リラックスできる状態で徐々に徐々に接近を試みます。トイレに入ることに恐怖感が無くなったら,用を足す段階に入っていきます。

  怖がるものを避けていては,いつまでたっても改善されないことがあります。上記の犬を怖がる程度では特に生活に支障はないかもしれませんが,外出先でトイレに入ることができなければ,活動の幅が大幅に縮小してしまいます。社会適応に向け,過度の恐怖反応は早めに弱くしてあげた方が良いです。

  こどもが安心できる状態で,徐々に刺激に接近することが1つのアプローチです。これは障害の理解や計画的な取り組みが必要なので,専門家に相談することをお奨めします。焦ってしまうと余計に怖がってしまうことがあるので,焦らずゆっくりと怖がる刺激に慣れさせてあげてください。

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