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 行動的支援勉強ノート2 

 教育的支援の基本


  行動療育や発達支援は,『個人の行動レパートリーの獲得と拡大』と『行動レパートリーが安定して出現するための環境の整備』のいずれか,または,双方からなされると考えられています(山本, 2009)。  

  例えば,行動レパートリーとして「おかし」(お菓子ちょうだい,という意味)という要求言語を獲得していたとしても,家庭生活でこどもが言葉で要求する前にお菓子をあげたり,クレーンで要求が通ると,「おかし」と言う必要がなくなってしまいます。SST(ソーシャルスキルトレーニング)で適切な挨拶ができるようになったとしても,家庭生活や学校生活で挨拶する機会が少なく,挨拶してもあまり周りからの反応が得られなかったら,挨拶するという行動は現れ難くなるでしょう。

  こどもが新しく獲得した行動,すでに獲得している適切な行動を維持し,日常生活で自然と使っていくためには,その行動を使う機会を増やし,周囲が反応をすぐに返すといった関わりが必要ということです。

  
先行条件(A):獲得した言葉や行動を使う機会を作る,使いやすい工夫をする⇒行動(B):言葉を使う,行動を行う⇒結果(C):要求が通ったり,反応が返ってきたりして強化される
という三項随伴性が環境調整の1つの形になります。
 

  上の例で言えば,こどもが指差しで要求してもしばらく反応せず,言葉で要求するまで待ちます。言葉での要求が自然と出なければ,「おかし」と言うことばを出させる場合は「お」,「おか」などヒントを出して促し,言葉で要求ができればすぐにお菓子を渡して精一杯褒めましょう。

  SSTによって挨拶するという行動を獲得した場合は,朝起きたとき,学校や園に行くとき,帰ってきたとき,ご飯を食べるとき,夜寝るときに挨拶する機会を確実に作ります。まずはこちらが挨拶をして返させるところからはじめ,徐々にこどもから挨拶を自発的に行うように工夫します。親族やお友達,先生にも可能であれば協力してもらい,様々な場面で挨拶する機会を増やすと良いでしょう。

  新しいスキルを指導した場合は,自分たちの対応を含めた『環境調整』を行い,学習した行動レパートリーを出現させ,反応が得られる機会を十分に設けます。多くの経験,成功体験を通して,行動レパートリーが定着し,特に環境を整えなくても自然と行動が自発するようになるでしょう。

  獲得した行動レパートリーは色々な場面で使えるようにならなければいけないので,可能であれば,学校や園と協力し,行動レパートリーを使う機会を作ってもらうと良いです。「今こういうことを勉強していて,こういうことができるようになったので(または,できるようにしたいので),できればこういう場面を作ってこのように対応して下さい。」と先生方と情報を共有します。こどもが学校でも新しく獲得した行動を使う機会が増え,ポジティブな結果が得られれば,行動が定着する大きな助けとなります。

  様々な経験を通して行動レパートリーを拡大し(できることを増やし),望ましい行動が起こりやすい環境作りが教育的支援の基本となります。物理的な環境を整え対応の仕方を工夫し,こどもが適切な行動を行う機会を増やし,周囲が適切に対応します。こどもの行動レパートリーは拡大を目指しましょう。


参考文献
山本淳一. 2009. エビデンスにもとづいた発達障害支援: 応用行動分析学の貢献. 行動分析学研究, 23, 46-70.
応用行動分析学入門(参考図書参照)

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