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  勉強ノート2 はじめに

  応用行動分析学(ABA)とは?

  行動は変わるということ

  障害特性と教育について


  叱責することのデメリット

 
 教育的支援の基本

  コラム.行動の見方と教育的支援

  注意力・集中力の問題

  習い事について

  物理的な環境調整や
  スケジュールについての考察


  刺激や活動を制限すること
  について

  何が誰にとって問題行動
  なのか?


  集団適応を阻害しやすい
  問題行動


  相手によって行動が変わる
  ことは悪いこと?


  進学、学校選びについて

  専門家の「少し様子を見ましょ
  う」というコメントについて


  専門家の「愛情不足」という
  コメントについて


  恐怖感や過敏な反応への対応

  コラム.自己刺激行動や過敏な
    反応について:疲れやスト
    レスとの関係


  切り替えの弱さへの支援

  渋々でも納得する力

  思いやりや人に親切にする
  行動について


  子育ての正解,不正解

  障害の受容について

  行動理論を理解してもらう


  行動的支援勉強ノートとABA
  にもとづいた支援について



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 行動的支援勉強ノート2

 物理的な環境調整やスケジュールについての考察


  「行動療育の基本」では、周囲の対応の仕方に焦点を当てた環境調整について解説しましたが、ここでは、物理的な環境調整とスケジュールの提示について、個人的な考察を含めて解説していきます。『個人の行動レパートリーの獲得と拡大』と『行動レパートリーが安定して出現するための環境の整備』が行動療育の基本であると説明しました(山本, 2009)。色々な要因が関係してきますが、私は基本的には年齢によって、その比率を変えていく必要があると考えています。

  まず、物理的な環境調整について考えていきます。なぜ、刺激を制限したり、勉強する場所を固定したりする環境調整が必要とされることがあるのでしょうか。『3-2. 行動の見方』で行動をABCの行動随伴性の枠組みで捉えるということを解説しました。

  『(A)どのような状況で、(B)どのような行動をすると、(C)どのような結果が得られるか』という枠組みになりますが、通常、人は行動のきっかけとなる先行条件(A)を自然な環境の中に見出します。例えば、先生の指示や黒板への板書、チャイムの音、時計を見る、カレンダーを見る、「4時になったら買いもの行くよ」と声をかけられる、周りのこどもの動きを見る、など。そういう手がかり刺激をきっかけにして行動を開始します。これらの自然な環境の中の刺激を手がかり刺激として行動しており、これらの刺激は社会的な刺激、社会的な手かがり刺激と呼ばれます。

  知的障害や発達障害があると、これらの社会的な手かがり刺激によって適切に行動することが難しい方がいます。自閉症の傾向があったり、注意の問題があると、声かけや周りの動きなどの適切な手がかり刺激に注意を向けたり読み取ったりすることが難しいことが多いです。

  そのため、物理的な環境を調整したり、刺激を制限したり、構造化することで先行条件(A)を分かりやすく明確にし、適切に注意を向けやすくするということです。周囲の雑音や刺激に対して注意が逸れてしまうことを避けるために周りについたてを立てた静かな環境にしたり、黒板の周りの刺激を取り除いたり、座席を一番前に持ってきたりする環境調整を行います。聴覚的な刺激よりも視覚的な刺激の方が注意を向けやすいため、絵カードや写真を用います。

  また、課題や日課の見通しが持てなければ不安になったり、動機づけが下がったりすることにつながるため、先行条件(A)として,スケジュールを提示し見通しを持ちやすくする支援を行うことがあります。これらの先行条件(A)を操作し適切な行動が起こりやすくする手続きを応用行動分析学では『先行子操作』と言い、TEACCHで自閉症の方への支援としても推奨されています。発達障害のある方が適切な刺激に注意を向けやすいように物理的に環境を調整し、適切な行動を取りやすくするという支援は、支援する側も楽だし、支援を受ける方もストレスなく行動できるので1つの有効な支援方法です。しかし、教育的な視点を合わせて持つ必要があります。



 上の図が私の考える、行動レパートリーの拡大を中心とした教育的な支援と物理的な環境の構造化との年齢による望ましい比率の推移を示します。基本的にどちらに重きを置いた支援を行うか、支援の優先順位と考えて下さい。私は年齢が低い間は、刺激を制限したり、構造化したり、きっちりしたスケジュールを提示するといった環境調整は最小限にし、自然な環境で適切に行動できるように教育することを重視した方が良いと考えています。

  応用行動分析学(ABA)では適切な行動が起こりやすくするヒントを『プロンプト』と言い、自然な社会的手がかりで行動できるようにプロンプトを徐々に弱めていく手続きを『フェイディング』と言います。障害のあるこどもが適切な刺激に注意を向けて動きやすくするようなプロンプトは大切ですが、教育的な視点を持ち、そのプロンプトが無くても行動できるようにプロンプトをフェイディングしていく(弱めて無くしていく)ことがとても大切になります。

  必要であれば、絵カードや写真を用いたり、環境を構造化するという強いプロンプトを用いて適切な行動を促し、そういったプロンプトで適切な行動が安定して見られるようになれば、プロンプトを徐々に弱め、特別な支援の無い自然な環境でも適切に行動できるように計画します。

  『4-4. 柔軟性、変化への耐性を養う』でも解説しましたが、物理的な環境を構造化しこどもがスムーズに動けることが教育的な目標ではなく、徐々に環境調整を崩していき、自然な環境(ルーズな環境、制約の少ない環境)で社会的手がかり刺激に反応して行動していくことができるようになることが目標です。

  いつまでも強い環境調整を続け刺激を制限していると、その場面では行動できるかもしれませんが、異なる環境では適切に行動することができず、スケジュールや環境の変化、雑音などの刺激に対してすぐに混乱してしまうようになり、社会適応がより難しくなります。こどもが少々混乱しても多様な刺激や変化に慣れさせて、柔軟性を養っていく必要があります。また、特別な環境調整が無くても、社会的な手がかり刺激に適切に注意を向けて行動できるように、訓練していく必要があります。

  そして、年齢が上がり成人すると、知的障害の程度によっても変わりますが、新しい行動や複雑な行動の学習に時間がかかるようになることが多いです。何歳になっても、新しい行動レパートリーの拡大や活動の幅を広げるような教育的な支援は必要ですが、そのような支援を受ける機会は年齢が上がるとともに、特に学齢期を過ぎると少なくなってしまいます。そのため年齢が上がってくると、その時に持っている力を最大限に引き出すような物理的な環境調整が大切になってきます。

  このように、年齢が低い間は物理的な環境調整を最小限にし(全く無くて良いという訳ではなく、過度に環境を構造化したりスケジュールを提示したりしないということ)、自然な環境で行動できることを目指した教育的な支援を中心に行い、年齢が上がってくると、その時に獲得している行動レパートリーを最大限に発揮できるような物理的な環境調整の比率を大きくしていくのが良いと私は考えています。

  発達検査を受けたり専門機関で相談を受けた場合、特に自閉症のあるこどもに対しては、スケジュールの使用、視覚的な支援、写真の使用、環境の構造化が日本ではよく定型文のように提案されることがあります。しかし、環境を構造化し、刺激を制限することの悪影響も同時に考えなければいけません。

  最終的な目標は自然な環境で社会的な手がかり刺激に適切に注意を向けて行動できるようになることなので、そのような物理的な環境調整は極力少なくし、また、無くしていくように教育的に計画していかなければいけません。

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