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 応用行動分析学勉強ノート

 消去と消去バースト 1
 

  知的障害や発達障害の有無にかかわらず,行動は望ましい結果(強化子)によって強化され,維持されます。『消去』とは,特定の行動の強化子を撤去する,つまり,望ましい結果を得られなくする手続きのことです。

 1. それまで強化されてきた行動が,
 2. もはや強化的な結果事象をもたらさなくなり,
 3. その結果,その行動がそれ以後生起しなくなる。

  代表的な消去の手続きは『計画的無視』です。これは,こどもが特定の行動を示しても(B),無視して対応しない(C)ということです。これは他者からの注目を得る機能を持った問題行動にも有効です(他者から注目を得ることで強化されている問題行動)。多分このページを読んでいる大半の人たちが考えているよりも多くの問題行動が他者からの注目によって強化され,維持されています。ABCの行動随伴性で考えると,行動(B)には,自傷や他害,かんしゃく,物壊し,わがまま行動,不潔行動,泣いたり怒ったりといった情緒的な行動など様々な行動,そして命にかかわるような強度な行動障害も,他者から注目を得るという結果(C)のために強化されていることがあります。

注目の獲得によって問題行動が強化される三項随伴性:
『(A)プレイルームで遊んでいる→(B)自分の頭を叩く→(C)親にかまってもらえる』と,自傷行動によって親からの注目を得られるので,問題行動が強化される。

計画的無視を用いた消去の三項随伴性:
『(A)プレイルームで遊んでいる→(B)自分の頭を叩く→(C)誰もかまってくれない』と,自傷行動を行っても誰からも注目が得られないので,問題行動が減少する。

  例えば,こどもが怒って玩具をなげたときに叱ったりなだめたりする,泣いて自分の頭を叩いたときに心配して抱きしめてあげる,といった対応は良くみられる対応であり,保護者として当然の対応のように見えます。しかし,そのような対応によりこどもは保護者の注目を獲得することができるので,知らず知らずのうちに問題行動を強めて維持している可能性があります。この場合,こどもが泣いて頭を叩いても注意したり過度にかまったりするような強化的な対応をせず,計画的に無視をすることで問題行動の減少につながります(重大なけがをしたり,他者を傷つけないような配慮は必要)。具体的には,表情や視線,声のトーンを変えないようにして,こどもの手を抑えたり,頭にタオルをかけるなどして淡々と対応します。「大丈夫?かわいそうに」や「もうやめなさい!」と騒がしく過度に対応することを避けます。

  こどもが問題行動を示した場合,周囲が騒がしくなる場面をよく見ます。どういう対応であっても,周りが過度に反応すると問題行動は強まる可能性が高いです。問題行動には過度に反応せず,冷静に対応しなければいけません。激しく床に頭を叩きつける自傷やかんしゃくが計画的無視によってほとんど無くなったという報告もされています。

  「3-4. 代表的な行動の機能と行動が形成されるメカニズム」に解説しましたが,代表的な問題行動の機能(目的)は注目の獲得だけではないため,その他の機能を持つ問題行動を消去する場合は異なる消去の手続きを用いなければいけません。例えば同じ自傷行動であっても,それが注目を得るという結果によって強化されているならば計画的無視は有効ですが,自傷することによって課題をしなくてすむ(A:プリント課題が配られる,B:自分の頭を繰り返し叩く,C:課題が取り除かれる or 教室からでることができる)といった課題からの逃避の機能をもっていることがあります。その場合,問題行動を無視していて,こどもが課題をしなくても良いという結果が伴えば自傷行動は減少しません。この場合の消去の手続きは,自傷行動が起こっても課題を継続して行うということです。問題行動によって課題から逃避できるという結果が得られないようにします。

  事物の獲得の機能を持った問題行動,例えば,隣のこどもが使っている玩具が欲しいからそのこどもを叩いて玩具を取るといった問題行動を消去する手続きは,問題行動を示しても玩具を得られなくするということです。もしこどもが上記のような他害行動を示したならば,すぐに部屋から出したり部屋の端に連れて行ったりして,一定時間遊べないようにする対応があります(タイムアウト)。盗食も食べ物を得るという結果によって維持されていることが多いため,盗食をしそうになっても絶対に他の人の食べ物は食べさせない,または,数分間食事を取れないようにするという消去の手続きをとります。

  最後に自傷行動などの問題行動が感覚刺激を得るという機能をもっていれば,計画的無視は意味がありません。なぜならこちらが無視していても,自傷行動を継続し感覚刺激を得るという望ましい結果を獲得し続けるからです。感覚刺激を得るための問題行動を消去の手続きだけで減少させることは難しいです。例えば,頭叩きをすることによって感覚的な刺激を得ている場合,ヘッドギアをつけるなどして得られる刺激を少なくすることは可能ですが,感覚刺激を全く得られなくすることは難しいからです。できるだけ感覚刺激が得られないよう消去の手続きを工夫しながら,その他の介入手続きを合わせて用いる必要があると思います。

  以上のように問題行動の機能によって消去の手続きは変わってくるため,問題行動の機能を予測し(機能的アセスメント),消去の計画を立てることが大切になります。

 【参考図書:行動変容法入門】    


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