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【カウンセリングルーム/こども行動療育教室】 〒541-0041大阪市中央区北浜3丁目5-19 淀屋橋ホワイトビル5F TEL.06-6203-2410 |
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勉強ノート目次 |
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個別療育の進め方 | ||
![]() 前頁で逸脱行動の消去について解説しましたが,学習態勢を形成する際の優先順位は,第1に逸脱行動が起こらないように課題内容や環境を工夫し,課題に取り組む行動を強化し成功体験を積むことです。第2に環境を整えた上でこどもが逸脱行動を起こしてしまったら消去することです。 こどもが望ましくない行動を行う場合(例えば,学習に取り組まない),「できない」と「やらない」を分けて考える必要があります(望ましい行動の未学習 or 誤学習)。 こどもが「できない」ことならば,スモールステップで正しい行動を教えていく必要があります。しかし,こどもができるけれど「やらない」場合は,望ましい行動が起こりやすく,望ましくない行動が起こり難い随伴性を整える必要がありあます。 療育の初期の学習態勢を形成している段階は,「できない」ことを教えている段階です。いきなり椅子に座って数十分課題に取り組むことができるこどもは少ないです。『学習態勢を形成する1』で解説したように,机上学習に取り組む行動を楽しくスモールステップで教えていく必要があります。 この段階で少し難しい課題を提示したり,課題時間が長くなった時にこどもが逸脱行動を示すのは,ある程度仕方がありません。逸脱行動を示さないように課題内容や課題量を無理のない程度にする,逸脱行動を示しそうな様子が見られたらパッと課題を終了したり,気持ちを切り替えさせると良いです。 例えば10までの数を数えるような課題を行っていて,こどもが数えるのを嫌がる素振りを示したら,「じゃあ先生と順番に数えよう」と言って交互に数えたり,「6から先生が数えるから5まで数えて」と言って課題の難易度を下げたりして,逸脱行動を起こす前に気を逸らせます。先生の頭を叩きながら10まで数えさせたり,足踏みしながら数えるなど楽しい活動に切り替えて気を逸らせても良いと思います。療育の初期の段階は,逸脱行動を消去するよりも,療育場面で逸脱行動を行わせないように楽しく進める方が大切です。 次に,一定時間落ち着いて課題に取り組めるようになってきた時に示す逸脱行動への対応は療育の初期の対応とは変わってきます。「できる」けれど「やらない」という段階です。まず,この段階でも課題内容や課題量,プロンプトの程度を考え,できるだけ逸脱行動が起こらないような配慮は必要です。しかし,この段階では,難しい課題にも取り組む,疲れてきてもがんばる,という力をつけることも標的となるため,少々しんどくても,こどもにがんばって課題に取り組ませなければいけません。 この段階では,こどもが逸脱行動を示す前後(逸脱行動を示しそうな素振りを見せたり,示した後でも),課題内容の変更や気を逸そらせるような対応は行わず,最後までこちらが提示した課題に取り組ませなければいけません。例えばこどもが課題を投げたら拾って取り組ませる,席を離れたら戻らせて取り組ませる(気にしている素振りは見せず,過度な対応はしない),といった対応が必要になります。 こどもが毎回逸脱行動を示すようでは,療育場面や勉強自体が嫌いになってしまうので,逸脱行動を示したら前述のように消去しなければいけませんが,極力逸脱行動を示させないような配慮は必要です。大切なことは,こどもが逸脱行動を示さない程度,がんばることができる程度の難易度や課題量を提示するということです。今のこどもの力を把握し,こどもががんばって何とか取り組める程度の課題を提示し,成功できたら褒めてあげて,がんばる力を高めていきます。 こちらの提示した課題の困難さや課題量がこどもの限界を超えており,こどもが逸脱行動を示してしまった場合でも,上記のように消去したり,自然なプロンプトをお持ちいて最後まで取り組んでもらわなければなりません(心の中では,「量が多すぎた申し訳ない」と思いながらも)。しかし,その後の休憩時間を長くしたり,次回のセッションでは少し課題量を減らしたり,簡単な課題を増やしたり,プロンプトを多くしたりして,こどもが逸脱行動を示さないように配慮します。そして徐々に課題の困難さや量を増やしていきます。 このように学習態勢の程度によって逸脱行動への対応は変えていきます。療育の初期の段階から,逸脱行動を消去して最後まで取り組ませるといった対応を行うと,こどもが療育を嫌いになってしまう可能性があります。逸脱行動の消去を第一優先とする考えは誤りです。応用行動分析学(ABA)に基づいた療育は,問題行動を消去して取り組ませることが中心だと思われることがありますが,問題行動を起こさせず楽しく療育を進めることの方が大切であり,こどもの今後の学習にとっても有益です。楽しく前向きにとりくめるように十分に工夫を行い,それでも逸脱行動が起こってしまった場合はしっかり対処するということです。 療育場面ではこどもが逸脱行動を示さないように配慮して療育を進めることが大切です。ある程度学習態勢が形成されてきたら,少々逸脱行動を示しても消去して,最後まで課題に取り組ませましょう。 <<前の頁へ 次の頁へ>> 行動的支援勉強ノート 目次 参考図書 おすすめ図書 みどりトータルヘルス研究所 こども行動療育教室 みどりトータルヘルス研究所 カウンセリングルーム |
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