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勉強ノート
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 行動的支援勉強ノート 1

 褒めてこどもを育てよう!


  
『3章 行動と理解の対応』にて,問題行動が形成されるメカニズムと対応方法を解説しました。日々の支援で大切なことは,褒めてこどもを育てるということです。これは倫理的な話だけではなく,教育的にも大切なことです。発達障害のあるこどもは様々な困った行動を行うため,気がつくと1日の関わりのほとんどが注意や叱責ばかりだったということになりかねません。そうなるとご家庭の雰囲気が悪くなり,保護者もこどもも気が滅入ってしまうでしょう。問題行動は目立つため,どうしても注目してしまうことが多いです。

  怒ったり注意したりしても問題行動の減少につながることは少なく,こどもが自信を無くしたり,怒る人の前だけでは大人しくしたりといった,望ましくない結果につながることが多いです。周囲が注目する行動は増えていきやすいため,問題行動に注目していると問題行動が強まる可能性が高いです。保護者や支援者も自信を無くしてしまうでしょう。

  教育的支援の目標は,将来可能な限り社会に適応した活動的な生活を送るために,行動レパートリーや活動レパートリーを拡げることです。
できることを増やすということです。問題行動の低減が第1の目標ではありません。そのために,望ましい行動が起こりやすい環境を整え,望ましい行動を行い,褒められたり達成感を感じたりして強化されるといった成功体験を積み重ねることが大切です。

  行動の原因を環境に求めることのメリットでも解説したように行動の原因をこどもの内面に求めると腹が立つことが多くなります。目の前のこどもが困った行動を示した場合,まず第1に『声かけが分かり難かったかな?』,『何か伝えたいのかな?』,『自分たちの対応をどこか変えることができないかな?』と理由を考え,先行条件(A)と結果(C)を工夫をしていく方が建設的です。

  『褒めてこどもを育てよう』という理由とポイントを数点考えていきます。

①『できることを増やす』ことが第一目標。
  幼少期,学齢期は教育的支援により,
行動レパートリーの拡大,こどものできることを増やすことが第一目標です。問題行動をなくすことが第一目標ではありません。なぜ問題行動を減少させないといけないかというと,問題行動がこどもの学習の機会を奪ってしまうためです。問題行動が減少することで,集団参加が増えたり,作業や余暇活動に取り組むことができたり,電車で移動できたりといった社会的学習の機会が増えることが大切です。
  そのため,注意や叱責によって問題行動に対処するよりも,こどもの良い行動や頑張り,成長に注目して拡げていくことが大切です(現実的には難しい状況もありますが,できるだけ!)。良い所やがんばりをたくさん見つけて,しっかり認めてこどもに伝え,褒めてあげましょう。適切な行動のレパートリーが乏しいために問題行動を行っている場合は,適切な行動をスモールステップで教えてあげる必要があります。できることが増えてくると,今の問題行動は減少します。

②成功体験と失敗体験。
  発達障害のあるこどもは集団生活の中で失敗体験をすることが多いです。周りのこどもの様に作業や活動ができなかったり,遊びに参加できなかったり。失敗体験を積み重ねると自信がなくなってしまい,二次障害につながる可能性があります。
こどもが自信をつけることも教育的支援の大切な目標です
  そのため,少々の問題行動があったとしても,それはそれとして,こどもの良いところやこどもなりの頑張りを認めて伝えてあげ,成功体験を積み重ねて自信を養う必要があります。特に失敗体験が多くなるこどもに対しては,関わる全ての人が意識して良いところをたくさん認めて,褒めてあげるべきだと思います。

③褒めることも簡単ではない:褒めるスキルを高めよう。
  保護者も専門家もこどもを褒めるということは簡単なことではありません。問題行動は非常に目立つため,強めない程度にさらっと対応することも難しいでしょう。こどもの些細な成長やこどもなりの頑張りを見出すことも容易ではありません。こどもが問題行動を起こした後に大人側も中々気持ちを切り替えられないこともあると思います。
  そのため,
保護者も専門家もこどもを褒める練習をして褒めるスキルを高めていきましょう(スモールステップで!)。まずは,「これはこれ,それはそれ」といったように,問題行動があったとしても,それはそれとしてこどもの良い所や成長はしっかり認めて伝えていきます。「玩具投げちゃったのはお母さん悲しいけど,謝ることができたね」というように。また,悪いところは目につきますが,良いところは見逃してしまうことが多いです。常に,こどもなりのがんばりや変化,成長を見逃さないように保護者間や支援者と情報を共有したり,注目する練習をしていきます。その時,頭に描くこどもの理想的な姿や周りのこどもと比べて『○○ができていない』という見方をすると,こどものできないところが強調されるので,『少し前の状態から比べて○○ができるようになった』という見方をすると良いでしょう。
  保護者も支援者も人間なので,いらいらしたり,気持ちが切り替えにくいこともあると思います。その時はまず自分の状態を把握して,気持ちを落ち着ける手立てを取って下さい。ストレスコーピングといわれるものですね。可能であれば少しこどもから距離を取って,コーヒーを飲んだり,音楽を聴くなどしてクールダウンしましょう。編み物や別の趣味に注意を向ける時間を取ることが可能であれば良いリフレッシュになります。
  どうしても注意や叱責が増え,こどもとのポジティブな関わりが少なくなる傾向があれば,1日を振り返り,その日どのくらいこどもを褒めたのか,ポジティブな関わりを行ったのか,こどもの成長を見つけられたのか,を数えてみて下さい(試しにどれくらいこどもを叱責したのかも)。意外と少ない場合は,『1日に5回はこどもを褒める』などスモールステップで目標を決め,計画的にこどもとのポジティブな関わりを増やしていくことも1つの方法になります。こどもを褒めるスキル,良いところに注目するスキルを高めていきましょう。

褒めることも簡単ではない:褒められる機会を増やすための環境調整
  応用行動分析学にもとづく支援の基本は三項随伴性になりますが,先行条件(A)と結果(C)の工夫が大切になります。先行条件(A)は,望ましい行動が起こりやすいように,声のかけ方や目標設定,課題の量や内容や提示の仕方,物理的な環境などを工夫します。
 
 先行条件(A)の工夫のポイントは,結果(C)でいかに褒めてあげられるように環境を調整するかになります。目標設定や課題の量,モデルの提示の仕方,指示の内容などをどのように工夫すれば,沢山褒めてあげられる結果(C)につながり,皆が気分良く過ごすことができるか工夫してみてください。
  例えば,授業中に離席のある児童,宿題を嫌がるこども,食事中に立ち歩くこども,部屋を散らかすこども,けんかが多い兄弟,ゲームがなかなか止められないこども等に対して,どのような目標を設定したり,どのような指示を出したり,どのようなモデルを提示したり,どのような配慮をすれば,最終的に少しでも褒めてあげられるでしょうか。工夫次第です!

⑤普通に過ごしている時に注目する。
  適切な行動を行った時,または,
普通に過ごしている時に注意を向けて話しかけたり,褒めてあげたりして積極的に関わっていきましょう。何か頑張ってやり遂げたりした場合に褒めてあげることは当然ですが,普通に過ごしている時,例えば,落ち着いてご飯を食べている時,静かにテレビを見ている時,走らずに散歩している時などは当たり前だということで特に対応されないことが多いです。
当たり前に普通に日常を過ごすということは非常に大切なことであり理想的な姿でもあります。こどもが普通に過ごしている時に意識して注意を向け関わってあげてください。大げさに褒めなくても「テレビ楽しいね」と言って隣に座って一緒に見たり,「○○してくれたらお母さん嬉しいわ」と気持ちを伝えたり,「ハサミ持ってきたの」とこどもの行動を言葉で伝えるだけでも良いです。
  『3-7.日常生活で問題行動を強めないために』と合わせて説明すると,
“問題行動を起こしても過度に関わらず,普通に過ごしている時に積極的に関わるということをこどもとの関わり方の基本に考えて下さい(他行動分化強化)。ABCの三項随伴性の枠組みで考えると,望ましい結果が得られる行動はその頻度が増えていくため,普通に過ごすことで保護者に関わってもらうことができ,褒めてもらえる機会が増えれば,落ち着いて日常を過ごせる時間が増えていきます。

⑥暴力的な言動を見せない(観察学習)。
  保護者はこどもに,何か問題場面に出会った時に暴力的な言動で対処するようになってほしくないと考えられていると思います。怒ったり,威圧したり,暴力を振るったり。そのための1つの方法は,
暴力的な言動で問題を解決する場面を見せない,ことです。人は他者の行動を見て学習するので(観察学習),その様な場面を見ると同じような言動を学習してしまう可能性があります。
  こどもが問題行動を示す場面は,保護者や支援者にとっては問題場面と考えることができます。何とか良い方向に解決したいと考えると思います。その時に,暴力的な言動,注意叱責で解決しようとしてしまうと,その行動をこどもが学習してしまう可能性があります。問題行動にはできるだけ感情的にならないように対応し,時間が経過してこどもが落ち着いたら,こどもが分かりやすい形で,同じような状況でどのように考えたらよいか,行動したらよいかといった問題解決方法を一緒に考えてあげて下さい。

⑦すべてを受け入れるということではない。
  『4-2. 指示の出し方,静止の仕方』でも解説しましたが,誤った行動を修正するためには厳しい対応を取らないといけなことがあります。ここでいう厳しい対応とは,行動理論にもとづいた一貫した対応,きっちりした対応という意味で,感情的に叱責するという意味ではありません。良いことは良い,ダメなことはダメ,という線引きを明確にし対応を一貫することが重要です(ABCの三項随伴性を明確にし一貫するということ)。

  ポジティブな関わりが増えていくと,こどもも保護者も日々の生活を楽しく過ごすことができ,家庭の雰囲気も良くなり,日常のストレスを和らげることにつながります。

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