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 行動的支援勉強ノート2 

 注意力・集中力の問題について


  知的障害や発達障害のある人は,注意力や集中力,記憶力が苦手なことがあり,様々な場面に影響します。例えば,担任の先生の全体への指示に反応できない,課題で必要な刺激に注意を向けることができない,課題や作業を持続して行うことができない,落ち着いて座っていることができない,忘れ物が多い,話しかけられても反応しない,など。注意力や集中力,記憶力は様々な勉強や集団活動の基盤であり,行動療育の標的スキルとなります。

  注意は様々な側面に分けて考えることができます。例えば,視覚的注意と聴覚的注意,または,持続的注意と選択的注意と分割的注意など。自閉症のある人は視覚的な情報処理が得意な人が多く,写真やスケジュールの提示といった視覚的支援が行われることが多いです。しかし,自閉症だから視覚的支援を行うということではなく,その人の特性に合わせた支援が必要になります。

  注意障害の方に対して認知リハビリテーションでは注意訓練を行うことがありますが,行動療育でも注意力や集中力,記憶力といった認知機能を標的とした訓練を行います。単純な課題に時間をかけて取り組んたり,文章を聞き取って復唱したりといった注意の持続に関する課題や,多様な刺激から必要な刺激を選んだりする注意の選択に関する課題を行います。

  このような課題は注意が弱いこどもには苦手な課題なので,興味を引くように課題を工夫したり,スモールステップで課題を行い,課題に取り組む行動を強化する必要があります。集中力に関しても本人が課題に無理なく取り組むことのできる時間を把握し,少しがんばったらできる程度の課題を繰り返し行い,集中できる時間を延ばしていきます。注意力や記憶力が必要な遊びを配慮しながら楽しく行うことも有効です。


  日々の関わりでも注意の弱いこどもに対しては特別な配慮が必要です。声かけや指示に反応しないということは,ABCの三項随伴性で考えると,Aの先行条件に反応できていないということです。A(先行条件)を明確にし,正しい反応が得られたら頻繁に積極的に強化します。A(先行条件)を明確にするためには,まず近づいて名前を呼んだり肩を叩いたり音を出したりして,注意を向けてから指示を出します。「プロンプト・フェイディング」で示したように,明確な指示から徐々に指示の強さを弱めていきます。聴覚的注意が弱いこどもならば,視覚的な刺激と聴覚的な刺激を合わせて指示をだし(例えば,写真を見せながら次の作業の説明をする),徐々に視覚的支援を無くしていきます。

  『(A)こどもが反応できる明確な指示,(B)指示に反応する,(C)強化される』という経験を繰り返すことによって,園や家庭で注意力を養うことができます。

  注意力や集中力,記憶力は短期間で大幅に向上するものではありません。練習を積み重ねることで短距離走のタイムが少しずつ縮まるように,長期的に根気強く成長を促していきましょう。


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