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 日々の生活の中での教育的な関わり

 こどもの反応性を高める


   療育開始前や初期の段階では,こどもが呼びかけに反応し難いことがあります。こちらが名前を呼んだり音を鳴らしても振り向かなかったり,聞こえていないように振舞ったりします。自閉症の傾向があったり,発達障害や知的障害が重かったりするとその傾向が強いことがあります。様々な課題と並行して,療育場面や日常生活でのこどもの反応性を高めていく必要があります。他者からの働きかけに反応するスキル(人の声,自身への声かけに選択的に注意を向ける)や,注意を切り替えるスキルは大切です。

  ご家庭では,『声をかけられたら反応する』,『名前を呼ばれたら反応する』という経験を積んでいきます。三項随伴性で考えると
『A:「○○くん」と名前が呼ばれる‐B:こどもが反応する(顔を向ける,何?と答える,反応して近づいてくる)‐C:自然な対応やポジティブな結果』という随伴性を経験していきます。

  名前を呼ばれて反応しても,通常は際立ってポジティブな結果が得られることは少ないです。しかし,呼ばれて反応するという行動を学ぶ段階なので,こどもの反応に対して大げさに笑顔を返したり,こどもが喜ぶ結果が得られる状況も作っていきます。こどもが喜ぶ結果なら何でも良いです。

  例えば,こどもが高い高いを喜ぶなら,高い高いを数回してあげて,少し離れてこどもの名前を呼び(A),こどもが反応して近づいてきたら(B),高い高いをしてあげます(C)。こどもが見えるところから始め,こどもの後ろに回って名前を読んだり,隣の部屋から名前を読んだり,距離を離して名前を読んだりして,こどもが反応して近づいてきたらすぐに高い高いをして楽しませてあげます。くすぐったり,くるくる回したり,肩車をしたり,こどもが喜ぶ関わりを用いて楽しみながら進めていきます。

  名前を読んでも反応がなければ,大きめの声で名前を呼び,少し誘導してこどもの顔や体をこちらに向かせます。『名前を呼ばれても反応しない』というつながりをできるだけ経験させないようにします。そのため,反応しやすい位置や声かけから始めて,確実に反応するようにします。

  好きなおもちゃで遊んでいたら,パッと取ってこどもの名前を呼び,顔を向けたら(反応したら)笑顔で返してあげるなど,すこし意地悪ですが,反応を引き出す手段の1つです。

  関わりや遊びでこどもが喜ぶものが少なければ食べ物や飲み物を利用してあげてください。まずは近くから名前を読んでこどもが反応したら(振り向くなど)お菓子をあげて大げさに褒めてあげます。慣れて来たら少し離れたり,こどもが何かをしている時に声をかけて反応できたらお菓子や飲み物を少しあげて褒めてあげましょう。

  これらの日々の対応を通して『名前を呼ばれたら反応する』という経験を積むことで,徐々に反応しやすくなってきます。反応しやすくなってきたら,少し離れたところで名前を読んでこどもが反応して近づいてきたらタッチをして褒めてあげる,公園で遊んでいる時に名前を呼んで振り向いたら笑顔で手を振ってあげる,などを日に数回意識して行います。特にこどもがテレビを見ている時,ご飯を食べている時,遊んでいる時など何かに注意が向いている時に不意に名前を読んで,こどもが反応できるようになることを目指して,機会を増やしていきます。

  こどもからの働きかけに対しても積極的に反応を返してあげます。特に反応性の低いこどもであれば,少し目が合ったり,手に持ったおもちゃをこちらに向けたりしたときに,大げさに表情を作って反応を返してあげてください。人からの働きかけに反応し,自分の働きかけにも人は反応してくれるということを学んでいきます。


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