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 日々の生活の中での教育的な関わり

 言葉の指導を始めるときの家庭での関わり 1


  無発語のこどもへの言語訓練を始めるとき,まずは人とやり取りすることの意味を教えることは大切です。

  行動療育で言葉の指導を行うとき,他者に要求するスキルを指導するところから始めることが多いです。なぜかと言うと,指導前から何かしらの形で人に要求していることがあり(クレーン行動など),人に要求する場面は日常の中で多く,要求を通すことで強化しやすいためです。

  指差し,絵カード,写真,そのこどもが発することのできる言葉(「ばばば」,「まー」),欲しいものの名前(「おちゃ」,「うどん」)などを用いて要求することを指導します。欲しいものがあるときに自分で取るのではなく、人に何かしらの形で要求するというワンクッションを入れるようにします。相手の目を見て『欲しいものの名称+ちょうだい(ください)』と言えることを目指して,簡単な要求スキルからより社会的な要求スキルを教えていきます。

  保護者が日常生活で意識することは,先回りして動かずに,現在標的としている要求スキルをこどもに使わせる環境を作ることです。つまり,要求することが必要な環境を作り,要求行動を引き出して強化し,人に要求する意味とスキルを学びます。日々こどもと接していると,こどもが何を欲しいか大体分かると思います。その時に保護者が先回りして「はいはいお茶ですね」と言ってお茶を渡してあげると,『お茶が欲しい』ことを要求する必要がなくなり,要求スキルが定着しません。また,自分でお茶を取って飲むことができる環境でも,要求する必要はなくなります。

  まずは人に要求しないと欲しいものが手に入らないという環境作りが大切です。お茶を自分では手に入れることができないようにして,こどもが標的としている行動(言葉や指差しやイラストを手渡すなど)で要求するのを待ちます(またはヒントを出して促す)。お菓子を棚の上に置いたり,ジュースの蓋を固く閉めたり,いつもよりコップに入れるお茶の量を少なくしたりして,人に要求する必要がある環境を作ります。人に要求したら欲しい物が手に入る(要求しないと手に入らない)という機会を増やして,人に要求することの意味を教えます。


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