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 軽度知的障害やその他の発達障害のあるこどもの支援

 
ルールを決めて,守るということ 1

  
小学生や中学生のお子様をお持ちの保護者からのご相談に「こどもが言うことを聞かない」という内容のものがあります。

  例えば,夜寝る時間になっても寝ない,ゲームの時間を守らない,学校の宿題をしない,学校の準備をしない,など。保護者が注意したり,促したりしても素直に反応しなかったり,動き出しや切り替えに時間がかかったり,反抗したりするといったことです。

  様々な原因が考えられます。1つは,こどもの発達の遅れや注意の問題です。保護者の指示に注意が向かなかったり,理解できなかったり,切り替える力,見通しを持つ力,計画を立てる力などが弱いために,上手く次の活動に移行することができない,指示に反応することができないということです。

  もう1つは,保護者の言うことを聞いたり計画通りに動く行動を日々の対応で強めることができていないことが考えられます。相談時に話を聞いていると,こどものわがまま行動を強めるような対応をしてしまっています。これは保護者が一方的に悪いというわけではありません。こどもは発達の遅れやスキル不足のために指示に反応し難く,崩れやすい傾向にあり,保護者はそのような崩れやすい傾向にあるこどもへの対応の難しさから適切なかかわり方が上手くできていない可能性があります。こどもの崩れやすさと対応の難しさから,こどものわがまま行動を強めてしまい,『言うことを聞かない子』にしてしまっています。(『行動の見方と教育的支援』参照)

  今までの対応を悔やんでいても仕方がないので,具体的にできることから始めていくしかありません。上の2つの原因でまず改善できるのは,日々のこどもへの関わり方です。

  簡単に言うと,『保護者の言うことを聞く』という経験を積むことが大切です。これは言ってみればゴールなので,当たり前と思うかもしれませんが,保護者の言うことを聞く,という経験を積まなければ,保護者の言うことを聞く行動は習慣となりません。そのため,保護者の言うことを聞く行動を促し強めるためにどのような関わり方ができるかを,行動理論で考えていくということです。

  少し枠を拡げて言い直すと,
『ルールを守る』ということが対象になります。保護者の言うことを聞く,宿題は夕食前にすませる,ゲームは1日30分まで,8時になったら歯を磨く,学校の準備は風呂上りに行う,などご家庭のルールをしっかり守る行動を強め,習慣としていかなければいけません。

  応用行動分析学(ABA)では,守るべき行動,守られた時守られなかった時の結果,その期間を明記することを
行動契約と言いますが,ここでは分かりやすくルールという言葉を使います。

  ルールに従うという行動を習慣化することはとても大切です。これは,「先生の言うことは聞く」,「学校には行く」,「宿題はする」,「人は叩かない」,といった様々なルールを当たり前のものとして(疑問を待たず)守っていくことにつながるからです。また,「物は盗まない」,「電車の中では静かにする」,「異性の身体を勝手に触らない」といった社会的なルールを守ることにもつながります。これは健常児にも当てはまることですが,ルールを守るという行動が習慣化していないと,それぞれの場面でいちいち反発が合ったり,説明が必要であったり,ルールを守らせることに苦労することになる可能性があります。

  将来の育てやすさや社会適応につなげるためにも,早い段階からルールを決めたらルールに従うという行動を強化して習慣化していくことは重要であり,そのためには,ぶれない対応,一貫した行動随伴性が大切になります。



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