【カウンセリングルーム/こども行動療育教室】 〒541-0041大阪市中央区北浜3丁目5-19 淀屋橋ホワイトビル5F TEL.06-6203-2410 |
|||||
勉強ノート目次 |
||
行動的支援勉強ノート2 | ||
叱責することのデメリット 「4-7 褒めて子どもを育てよう」では,こどもを叱責したり注意しても不適切な行動が減少することは少なく,その他にも悪影響を与えることがあると解説しましたが,少し補足します。 おすすめ図書に島宗理先生の『パフォーマンス・マネジメント: 問題解決のための行動分析学』を掲載させていただきました。この本は発達障害を対象としたものではありませんが,人の行動の原理が分かりやすくまとめてられています。色々な叱責によるデメリットはありますが,ここでは,本で紹介されている『派生の原理』に注目して解説していきます (詳しく知りたい方は書籍をお読み下さい)。 『派生の原理』は,『強化子・好子(ポジティブな結果)や罰子・嫌子(ネガティブな結果)が現れると,そのとき,そこにいた人や物,状況などが好子化したり嫌子化したりする。』と言う行動の原理です。つまり,A-B-Cの三項随伴性の枠組みで考えると,ある行動(B)をして褒められるなどのポジティブな結果(C)が伴うと,その褒めてくれた人や,褒められた場所もポジティブなものと感じられるようになり,ある行動(B)をして叱られるなどネガティブな結果(C)が伴うと,その叱責した人や,叱責された場所もネガティブなものと感じられるようになるということです。そして,ネガティブに感じるようになった人や場所にあまり近づかなくなったり,怒りや恐怖といった情動反応を引き起こしてしまうことがあります。 例えば,『学校で課題をする時(A)ー課題に取り組まず話し出す(B)ー先生に怒られる(C)』とします。“課題に取り組まず話し出す”という不適切な行動を減少させるための対応ですが,『派生の原理』によって,叱責した先生,その時取り組んでいた課題や教室がネガティブなものになってしまう可能性があると言うことです。次に同じ課題をするのを嫌がったり,先生のことを嫌いになり学校に行くことを渋るようになったりするかもしれません。家庭での療育や日々の生活でも同じことが言えます。 逆に,『学校で課題をする時(A)ー課題に取り組む (B)ー先生に褒められる(C)』とします。そうすると『派生の原理』によって,褒めてくれた先生やその取り組んでいた課題や教室を好きになり,似たような課題への取り組みが良くなり,学校に積極的に通うようになる可能性があります。 叱責などのネガティブな結果は,『派生の原理』によって,その時の行動以外の多くの側面にマイナスの影響を与えてしまうことがあります。保護者や先生がこどものことを思って叱責したとしても,その影響で勉強すること自体が嫌いになったり,絵カードを見たら逃げ出すようになったり,今まで問題なく行けていた場所に行きたくなくなったりする可能性があります。倫理的に叱るのは良くないということではなく,行動の原理からも叱責の悪影響が考えられるため,できるだけ叱責せず,がんばったことや普通にできていることを積極的に褒めて,認めてあげる方が良いということです。褒めてあげられる工夫も大切になります。その方が保護者も気持ちよくこどもとかかわることができ,家庭の雰囲気も良くなり,長期的に見て望ましいことが多いでしょう。 「4-6. 自身の行動もこどもの行動に影響を受けている」に書きましたが,気づかないうちに自身の叱責行動が強まり,回数も多くなってしまっている危険性があります。つまり自身の叱責行動が強化されてしまっているということです。この変化は中々自分では気づかないので,注意が必要です。もし知り合いやご家族,同僚から「最近,怒りすぎだよ」と言われることがあったら,「そんなことはない!」と思うのではなく,一度客観的に自身の行動を振り返ってください。もしかしたら自身の叱責行動が知らず知らずのうちに強まってしまっているかもしれません。 子育てをしていると,注意したり怒ったりしなければいけないことはあります。どういう場面で叱責するか,事前に線引きをしておいても良いかと思います。 ここで解説した行動の原理やメカニズムを理解し,基本的に叱責ではなく,褒めることでこどもの適切な行動を伸ばしていきましょう。その方が,長期的には適切な行動の学習が促進され,こどもも大人もストレスが少なく,楽しく日々を過ごすことができると思います。 参考資料 行動分析学会 「体罰」に反対する声明 <<前の頁へ 次の頁へ>> 参考図書 おすすめ図書 行動的支援勉強ノート 目次 みどりトータルヘルス研究所 こども行動療育教室 みどりトータルヘルス研究所 カウンセリングルーム |
||
copyright©2013 みどりトータルヘルス研究所 all rights reserved. |